
「ボクシングを始めてみたいけれど、自分に向いているのか分からない……」
そんな不安を感じていませんか?
体格や運動経験によって向き不向きが決まるのか、それとも性格や考え方が影響するのか、気になる人も多いはずです。
本コラムでは、ボクシングに適した身体的特徴や性格をわかりやすく解説します。
「ボクシングに挑戦したいけれど迷っている」「自分に合っているのか知りたい」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
なおこちらのコラムは、BOXING CLUB藤本直人トレーナーに監修していただきました。

藤本 直人(ふじもと なおと)
︎・ボクシング歴 最高位日本バンタム級7位
・戦績 24戦12勝11敗1分
・得意分野 脚を使ったボクシング
皆さまが楽しんでいただけるよう教えていきたいと思っています!
ボクシング向きのフィジカルとは?

それでは、ボクシングで有利になりやすい身体的特徴からみていきましょう。
長いリーチと安定した体幹
手足が長いと、相手選手にパンチを届かせやすくなります。
相手の攻撃が届かない位置から打ち込めるため、距離をコントロールする上で大きな武器になるでしょう。
さらに、体幹が安定していると重心を崩しにくく、フットワークや体重移動をスムーズに行えます。
打ち終わりの姿勢が崩れにくく、攻撃と防御の切り替えを素早く行うことが可能になります。
●藤本トレーナーの補足
- Q体格的に不利な場合の対策(練習方法や戦術の工夫)は何かありますか?
- A
自分の場合は身長が低く、体も大きくなかったので、その辺りは不利でした。
その代わりにスピードはあったので「一瞬で相手選手の中に入る戦い方」や「遠い距離からの出入り」を意識した戦い方をしました。
瞬発力と動体視力がある
瞬発力が高い人は、スピードのあるパンチを繰り出せるため、相手の隙を逃さず攻め込んでいけます。
さらに、素早いステップインやバックステップによって、攻守の切り替えもスムーズに行えます。
加えて、動体視力が優れていると相手の動きを正確に捉え、攻撃やフェイントに即座に反応することが可能です。
カウンターを狙う場面では、一瞬の判断で試合の流れを大きく変えられるため、瞬発力と動体視力を兼ね備えた選手は試合運びで優位に立ちやすくなります。
●藤本トレーナーの補足
- Q過去対戦した中で、瞬発力や動体視力が飛び抜けて優れていた選手のエピソードを教えてください。
- A
昔に和氣慎吾選手とスパーリングをさせていただいたことがあるのですが、一瞬でボディーと顔面にストレートが2発飛んできたのには驚きました。
全くパンチが見えなかったです。
スピードがある=瞬発力があると自分は思っているので、和氣選手が一番当てはまるかなと。
- Q瞬発力や動体視力を鍛える際に、特に有効だったトレーニング方法は何ですか?
- A
自分の場合は、足の瞬発力はやはりダッシュトレーニングをやってました。
50メートルダッシュなど短距離をやってました。
また、シャドーボクシングでは、早く手を出してスピードを意識することでハンドスピードが速くなった気はします。動体視力はパンチを見る練習をしていました。
ガードの上から相手に打ってもらい、ガードしながら相手のパンチを見ることによってパンチに慣れました。
この練習をするようになってから、パンチがよく見えるようになりました。
優れた持久力とスタミナ

ボクシングの試合は、最長で12ラウンドにわたる持久戦になります。
スタミナがある選手は、最後まで安定したパフォーマンスを維持しやすくなります。
動きが鈍ることなく手数を出し続けられれば、相手にプレッシャーをかけることが可能です。
特に試合の後半になると、スタミナの差が明確になり、ガードの隙や足の止まりを突いて攻撃のチャンスを作りやすくなります。
●藤本トレーナーの補足
- Qスタミナが優れている選手が、試合終盤に逆転した経験などがあれば教えてください。
- A
自分が所属していたジムに日本チャンピオンが在籍していたのですが、防衛戦の相手がすごいスタミナがあって尻上がりに調子を上げていく選手でした。
やはり後半につれ調子が良くなり、負けはしましたがポイント的にも追い上げていました。
性格からみるボクシングの適正

次に、性格面の特徴をみていきましょう。
闘争心と粘り強さを持っている
ボクシングでは、攻める気持ちの強さと、相手の攻撃を耐え抜く精神力が求められます。
闘争心があると、試合の流れに関係なく積極的に前へ出ることができ、攻撃の圧力で相手の集中力を削る場面も増えます。
また、粘り強さを持つ選手は、不利な状況でも諦めません。
スタミナが切れかけた終盤でも、前に出続けることで相手のミスを誘い、逆転のチャンスを生み出せます。
特に、接戦や相手のペースに持ち込まれた場面では、精神力の差が勝敗を分けることがあります。
●藤本トレーナーの補足
- Q闘争心が強い選手が特に活躍した試合や、成功したエピソードを教えてください。
- A
堤選手と井上拓真選手の試合ですね。
堤選手の気持ちが強く表れた試合だと思いました。
1段階ギアを上げて後半にもう1段階ギアを上げて攻めていたので、気持ちが強いなと感じました。
後半であれだけあげられるのは、普段の練習からかなり追い込んでいるのだなと思います。
- Q闘争心や粘り強さが必要になるのは、どのような場面だと感じますか?
- A
不利な状況にこそ諦めない気持ち=粘り強さが必要になってきます。
冷静な判断力を持っている

試合中は、相手の動きを見極めながら、戦術を柔軟に変えていく必要があります。
冷静なボクサーは感情に流されず、相手のフェイントに惑わされにくく、焦らずに正しいタイミングで攻めることができます。
また、試合中の修正力も重要です。
セコンドの指示を的確に受け止め、瞬時に対応できると、劣勢の場面でも試合を立て直しやすくなります。
たとえ序盤にポイントを失っても、相手のクセを冷静に見抜き、後半に的確な戦術変更を加えることで逆転のチャンスを作りやすくなります。
●藤本トレーナーの補足
- Q冷静な選手は、具体的にどのような強みを発揮できるのでしょうか?
- A
「不利な状況でも、どのような手を尽くせばそこから挽回できるか」を戦いながら考えられる思考、そして外から観てるセコンドの指示を聞き実行できる行動力。
後述したセコンドからの指示も大事だと思っていて、実際に自分が戦っているときの感覚と外から客観的に観た時の違いがあると思います。
例えば自分はポイントを取っているとは思っていても、外から観たら取れていなく逆に取られているぞ、など。
それらの言葉をインターバル中に興奮してる中でもしっかりと聞き修正できること。
負けず嫌いで成長に貪欲
ボクシングは、日々のトレーニングの積み重ねにより、実力を伸ばしていくスポーツです。
負けず嫌いなタイプは、試合での敗北やミスを糧にし、より高いレベルを目指して努力を続けられます。
また、成長意欲が高いと、モチベーションを維持しやすく、厳しいトレーニングにも前向きに取り組めます。
練習を積み重ねるうちに実力が磨かれ、競技レベルの向上につながります。
●藤本トレーナーの補足
- Q負けず嫌いな選手が、トレーニングや試合で特にその性格を活かした具体例を教えてください。
- A
負けず嫌いというと自分も実は負けず嫌いでして。
後輩とかと900メートルダッシュ等や長距離をやったりしたのですが、負けたくなかったので死ぬ気でやってました(笑)
そのおかげで後輩達には負けることはなかったです。
ボクシングに向いている「意外なタイプ」
ボクシングとは一見関係なさそうですが、藤本トレーナーから意外なエピソードをいただきました。
サーフィン経験者が体験にいらしたことがあるのですが、体幹の強さが印象に残りました。
波の上でバランスを取る動作が、ボクシングの姿勢維持やフットワークの安定につながるのでしょう。
ボードの上で揺れに対応する力は、試合中に相手の攻撃を受けても崩れにくい身体づくりに役立つかもしれません。

「ボクシングが向いている人」についてのQ&A

Q:昔やっていたスポーツは何かボクシングに関係しますか?
大いに関係あると思います。
例えば野球のバットを振るときや、テニスのラケットを振るときの腰の回し方はボクシングでパンチを打つときの腰の回し方と一緒です。
また、卓球やバドミントンも、ボクシングの動きと関係してくると思います。
卓球は主に横への足の使い方、バトミントンは前後左右に素早く移動するための瞬発力や足の使い方がボクシングに役立つと思います。
ボクシングで足を使うタイプのボクサーは、前後左右に素早く動かなければなりません。
ちなみに長谷川穂積選手は、学生時代に卓球をしていたそうです。
あと個人的には、剣道なんかも関係すると思います。
相手との距離感、空間把握を上手く取ることができます。
BOXING CLUBの会員様でも、剣道をしていたという方がいて距離感がすごい良いなと思いました。
Q:他の格闘技経験をボクシングに活かすことはできますか?
十分に活かすことは可能だと思います。
打撃系の格闘技は特にです。
自分の現役時代、所属ジムで昔に極真空手をやっていた先輩がいたのですが、パンチが硬くて一発当たっただけでも嫌でした(笑)
毎回のようにボコボコにされた記憶しかありません(笑)
総合格闘技の選手もジムにスパーリングしにきていて、何回かスパーリングをしたことがあるのですがパンチは強かったです。
Q:身体的特徴、性格どっちのほうがボクシング上達に必要だと思いますか?
どっちが必要かどうかは一概には言えません。
ボクシングは身体的特徴(フィジカル)と性格、精神(メンタル)の両方があって成り立つものだと自分は思います。
Q:「本格的なボクシング」「マスボクシング」で向いている、向いていない人の特徴は変わりますか?

本格的なボクサーは、マスボクシングも強いと思います。
本格的と言ってもボクサーにもC〜Aまでランクがあり、それによっても変わると思いますが、パンチを当てられるということは、相手との距離を把握してるということです。
ボクシングでは距離が大切だと思います。
寺地拳四朗選手が代表的な例ではないでしょうか。
今は近い距離でも戦えるスタイルになっていますが、普段は足で一定の距離を保ちつつ左ジャブなどを当てていくタイプのボクサーでした。
あの距離感は真似できないです。
よく寺地選手のステップなどを真似していたこともありました(笑)
逆にマスボクシングしかやったことのない人が本格的なボクサーより強いことはないと自分は思います。
まず当てるか当てないかの違いです。
マスボクシングは基本当てません。
当てないということは、顔や体に届かない距離の攻防になります。
この距離に慣れてしまうと、スパーリングで相手の当たるところの距離が少し遠く感じると思います。
BOXING CLUBでも、スパーリングを開始しました。
最近スパーリングを始めた方は、少しわかるんじゃないでしょうか。
なので、この距離感の違いで本格的なボクサーはマスボクシングも強いと思います。
Q:反対に「ボクシングに向いていない人の特徴」は何かありますか?
向いていない人の特徴はないと思います。
いや、ないと思いますは変ですね。
もしその特徴があったとしても、練習をしていけばその特徴は補えると自分は思います。
自分は性格の面で自分に自信が持てなかったので、ボクシングをやるには向いてはいなかったかもしれません。
でも、その中でも練習していくうちに自信が持てるようになりました。
身体的特徴も、自分は背が高くはなかったので不利なこともありました。
だけど、スピードは自信があったので、踏み込みの速さや出入りでその点は補えました。
なので「向いていないと思われる特徴」があったとしても、他の点で絶対に補えると思うので大丈夫です。
まとめ
ここまで、ボクシングに向いている身体的特徴や性格などを紹介してきました。
しかし、本文で紹介した内容は、あくまでも傾向にすぎません。
実際にボクシングを始めてみると、自分でも意外な強みを発見して、夢中になれるかもしれませんよ。
ボクシングに興味がある方は、ぜひ一度BOXING CLUBの1日体験に参加してみてはいかがでしょうか?
シャドーやミット打ち、サンドバッグなど、基本メニューを体感していただけます。
また、そのほか、気になる点がありましたらお気軽にご相談ください。
