BOXING CLUB代表 今岡武雄さんは、ご自身の経験から常々「プロボクサーから営業マン、そして起業、メンタル管理は全てに共通する」と語っています。
ボクシングから学んだものが、その後の人生にも大きく生かされているようです。
そこで今回のコラムでは、今岡さんがボクシングで培った
の3つの力をご紹介していきます。
以前のコラムでも取り上げたテーマになりますが、今岡さん自身が非常に大切なことだと思っていますので、今回はより掘り下げた内容でお送りしていきます。
ぜひ最後までお付き合いください。
私(今岡)のボクシング人生
「ボクシングで培った力」を紹介する前に、まずは私のボクシング人生を知っていただけたらと思います。
私の幼少時代は、14インチのブラウン管テレビが一家に一台というのが一般的でした。
いわゆる団塊ジュニア世代ということで兄弟も多く、チャンネル争いが日常茶飯事の時代でした。
そんなこともあり、当時小学生の私が見たい番組は「ど根性ガエル」だったのですが、歳の離れた兄の影響で「あしたのジョー」を私も一緒に見ることになってしまいます。
最初は仕方なくだったのですが、不思議なものでいつの間にか兄よりも夢中になって見ていました。
しかし、振り返ってみると一つのテレビ番組が人の人生を変えてしまうというのは、改めて凄いことだと自分のことながらに思います。
そして、本格的にボクシングジムに通い始めたのは16歳の時になります。
17歳でプロテスト、18歳でプロデビュー、それから10年の現役時代を終え、28歳で引退。
この間ボクシングという競技と、厳しく愛情深い恩師に鍛えられたことを今でも感謝しています。
同時にその後の人生において、ボクシングで培ったメンタル、モチベーション維持、努力、挫折からの復活、緊張との向き合い方など、様々な経験が大きく影響してきたと実感しています。
私がボクシングで培った力①不安こそが力の源
とくにモチベーション維持は仕事なども含め、どの分野でも重要な課題だと思います。
私がボクサー時代行っていた方法は
「希望モチベーションと恐怖モチベーションの使い分け」
でした。
例えば次の試合に勝ちたい、チャンピオンになりたいなど、当然ながら「希望」が練習のモチベーションになります。
ところが、減量や日々の練習、仕事などで疲れが溜まってくると、正直希望だけでは動かなくなることがあるものです。
とくに朝起きた時、鉛のように重い体を引きずり気持ちを高めるためには、希望の力より「恐怖のパワー」のほうが私は動けました。
負けることで全てを失う
今までの努力が水の泡になってしまう
相手の選手は走っている
このように不安を煽ることで潜在的な力が出てくるのです。
実は疲れていると思い込んでいるだけで、人間追い込まれれば結構やれるものです。
火事場の馬鹿力がまさにそれに当たるかと思います。
やるぞ、勝つぞ、強くなるぞだけでは、どうにもならないくらい疲弊している時、この「恐怖モチベーション」が力になります。
「不安こそが力の源」
私の場合、今の仕事でも様々な場面で活かされています。
私がボクシングで培った力②ライバルは最高の援軍
早朝のロードワークは、仕事に行く前に行います。
ジムワークと違い、常に一人で行うため、自分の意思でその日の距離やペース、ダッシュの本数など決めていきます。
当然相手選手も同じことを、同じ時期に、どこかでやっているはずです。
そこでより良質なトレーニングを行うために、仮想の相手を作ります。
ロードワーク中は必ず「仮想相手が一歩先を走っている」ことをイメージします。
とくにラストの追い込みなど、心肺機能を強化するキツイ状況では、仮想ランナーは効果てきめんです。
ジムワークのサンドバッグの際も同様に、相手がいる想定で行うことで、パンチのキレ、スピード、パワーなど高いレベルで維持できます。
つまり緊張感によりダレないということです。
また同時に、持久力やパワーを高めるだけでなく、相手をイメージしていることで、ディフェンスやカウンターのタイミングなど、高度な練習を疲れた状況でできるのかが重要になってきます。
つまり頭のスタミナも鍛えられるというメリットもあります。
あらゆる場面において、
「ライバルは最高の援軍」
になり得ます。
私がボクシングで培った力③自信と不安の取捨選択
ボクサーは当然ながら試合をします。
これは何度経験しても、誰もが緊張するものです。
当日、試合前の控え室では、心臓が張り裂けるほど緊張していました。
ところが自分の番になり、入場曲がかかるとスイッチが入ります。
リングで相手と向き合う頃には、先程までの緊張が嘘のようにリラックスしていきます。
もちろんこれは調子のいい時であり、いつもではありません。
そこで「なぜ緊張するのだろうか?」と、自分なりに考察してみました。
「勝ちたい」という目的と「負けてしまうかも」という不安が交錯すると緊張が生まれるわけです。
であれば、調子がいい時には
「よしいくぞ」
という勝ちモードにして不安を捨て切る。
逆に緊張で思うようなパフォーマンスを出せない時など、不安が自信を上回ってしまっていると感じた時は
「勝ち負けに捉われずベストを尽くす」
といった、いわゆる開き直りの心理に切り替えて戦うことを意識していました。
そのどちらでいくかは、その瞬間、その場のインスピレーションで決めていました。
このあたりは理屈ではなく、キャリアだったように思います。
「自信と不安の取捨選択」
を習慣化することで、自分のスペックを最大限に引き出せます。
おわりに
引退して四半世紀経つ今でも、ボクシングというスポーツで培った心理的駆け引きや心の持って行き方などが役立っています。
ボクシングと仕事そして生活、非常に共通する部分があると私は実感しています。
これまで紹介した「3つの力」が、少しでも皆さんの日々の生活やお仕事のお役に立てれば幸いです。