趣味でボクシングを観戦していたり、実際にジムでボクシングのトレーニングをしていたりする場合
「プロボクサーって一体どんな練習をしてるの?」
「1日どれくらいの時間トレーニングしてるの?」
といったように、プロボクサー(本格的にボクシングをしている人)の練習内容に興味がある方は多いのではないでしょうか?
本コラムでは「プロボクサーの練習」をテーマに、Q&A形式で皆さんの気になっていそうな情報をまとめてみました。
もちろん、ボクサーにより個人差はありますが、一例としてご覧になっていただければと思います。
なおこちらのコラムは、BOXING CLUB太田涼介トレーナーに監修していただきました。
太田涼介(おおた りょうすけ)
・アマチュアボクシング ⇒ 国体・選抜大会出場
・プロボクシング ⇒ 4回戦ボクサー(C級ライセンス)
兄がボクシングをやっていたのと運動不足解消のため、中学3年生でボクシングを始めました!
ボクシングが楽しくなりアマチュアボクシング、プロボクシングを経験。
アマチュアボクシングとプロボクシングの経験を活かして、ボクシングの楽しさを伝えていきたいです!
- Q.プロボクサー1日のスケジュール例を教えてください
- Q.プロ時代、ジムでの練習内容を教えてください
- Q.1日の練習時間は平均でどれくらいでしたか?
- Q.自宅でも何かトレーニングをしていましたか?
- Q.アマチュアとプロの時代で練習内容、時間などは何か変わりましたか?
- Q.試合前や試合が特にないときで、何かメニューやスケジュールが変わることはありましたか?
- Q.週間、月間、年間でのスケジュール例や意識していたことを教えてください
- Q.練習に向き合う際に大事にしていたことは何かありますか?
- Q.ボクシングの練習はきつかったですか?
- ボクシングの練習について引退後の反省点
- ボクシングの練習に興味がある方は「1日体験」を!
Q.プロボクサー1日のスケジュール例を教えてください
プロ時代はもちろんのこと、アマ時代(高校)のことも教えていただきました。
プロ時代
- 6時起床〜ロードワーク&ダッシュ
ロードワークは、3キロ、5キロ、10キロを日によって分けてやっていました。
ダッシュは、坂道ダッシュ10本、50メートルダッシュ10本です。 - 7時食事
- 8時アルバイト〜17時終了
- 18時ジムワーク〜21時終了
- 22時帰宅
- 22時半食事
- 24時就寝
試合が決まった時は帰宅後にもロードワークをしていました。
アマチュア時代(高校)
- 6時起床〜朝食〜通学
- 7時学校到着
- 7時半部活(朝練)
ロードワーク、ダッシュ、筋トレ
- 8時45分授業
- 16時半部活〜18時半終了
- 19時ジムワーク
- 22時帰宅
- 24時就寝
高校の部活だけでやっている人は、朝練と夕方のみでした。
私はこの頃からプロボクサーを目指してアマチュアボクシングをやっていたので、ジムにも通っていました。
毎週土曜は、同じ県内の他校との合同練習がよくありました。
夏休みなど長期の休日は、合宿で佐渡、広島、山形、北海道、東京などへの遠征がありました。
Q.プロ時代、ジムでの練習内容を教えてください
練習メニューに加えて、各メニューごとに意識していた点も教えていただきました。
ストレッチ(10分)
私は、ストレッチしながら、その日の練習の段取りを考えていました。
全身のストレッチをやっていましたが、特に「肩甲骨」「首・手首・足首」を重点的に伸ばしていました。
肩甲骨はパンチを打つ際によく使うためです。
肩まわりの可動域を広げて、動きやすくする目的でストレッチしていました。
一方の首・手首・足首のストレッチは、スパーリングや練習の時に痛めないようにするためです。
ストレッチを念入りに行い、練習でケガをしないように気をつけていました。
シャドー(15分)
1R
体のキレ、コンディションをチェックしながらやっていました。
2〜5R
試合の状況を想定し試合で勝っている時、ピンチの時を想定して練習していました。
サンドバッグ(30分〜1時間)
「全力で強く打つ」「トップスピードで打つ」「連打する」「強弱分けて打つ」「試合を想定して打つ」など、ラウンドを混ぜながら練習していました。
ミット打ち(2R 6分)
私は4回戦だったため、試合が決まった時やトレーナーが空いている時だけミット打ちをやっていました。
プロが多かったので試合が近い人、強い人が優先でした。
トレーナーにミットを持って貰えるよう頑張りました。
マスボクシング(5R 15分)
マスボクシングとは、寸止めのパンチで行う実戦練習のことです。
カウンターや距離感、パンチを見て懐に入るといった点を特に意識して練習していました。
スパーリング(4〜8R)
試合が決まった時をはじめ、試合が決まった人のスパーリング相手をしたり、他ジムに出稽古などを行ったりすることもありました。
現役の頃は、試合を想定しながら相手を倒すことばかりに頭がいっていました。
しかし、トレーナーになってみて分かったのですが、実戦練習でもテクニックの練習やディフェンスの練習をやれば良かったと今では思っております。
強さだけでなく、上手さを磨けば良かったです。
当時世界チャンピオンの方とのスパーリングをした際は、レベルの高さを肌で感じることもできました。
縄跳び(20分)
縄跳びでは、引っ掛からないように飛び続けることを意識していました。
合わせて、リズムを変えても軸がブレないよう体幹も意識して飛んでいました。
アフターシャドー(1時間)
その日の仕上げで反省点やフォーム修正を意識してやっていました。
フットワークを確認するため、足だけのシャドーもやっていました。
筋トレ
知識がなかったため、独学で腹筋、背筋、体幹トレーニングを行っておりました。
サンドバッグで強く打つ練習をしていたため、サンドバッグも筋トレになっていたと思います!
Q.1日の練習時間は平均でどれくらいでしたか?
「だいたい2〜3時間くらいです。」
補足として、次のような質問にもお答えいただきました。
Q.他のボクサーもこれくらいの練習時間なのですか?(長めなのか、短めなのか)
個人差はあるでしょうが、だいたいのボクサーがほぼ同じくらいの練習時間だと思います。
ただトップクラスのボクサーの場合は、2部〜3部の練習をしているかもしれません。
みんな努力しているので、差をつけるには練習効率を意識することが大事です。
また、他のプロボクサーも同じくらい練習しているので、練習以外の時間の使い方も重要となります。
普段の練習で、周りのボクサーと差をつけるのは
練習以外の時間で疲労を抜いて日々良い練習をできるようにして練習効率を上げること」
と 「知識をつけること」の2点が特に重要だと私は考えています。
Q.仕事があるので練習時間を短くすることもありましたか?
プロボクサーにとって練習も仕事です。
たとえ他の仕事があっても、ボクシングの練習を短くすることはありませんでした。
Q.「もっと練習時間が欲しかった」「これくらいの時間がちょうどよかった」などありましたか?
練習時間は「1時間半から2時間くらい」がちょうど良かったと感じます。
実戦を意識した練習が1時間〜1時間半、基礎練習や筋トレなどが1時間といったイメージです。
もしバイトをしないでボクシング一本で食べていけるなら、朝〜夜の間に2部〜3部で練習したかったです。[各部1時間半くらいで]
また、フィジカルトレーニングとかも取り入れたかったですね。
加えて、体の使い方をもっと早く知って、練習しておけば良かったと今では思います。
Q.自宅でも何かトレーニングをしていましたか?
筋トレ(腹筋、背筋)、体幹、ストレッチを行っていました。
Q.アマチュアとプロの時代で練習内容、時間などは何か変わりましたか?
アマチュア時代
アマチュアは、部活というのもあったのでみんなで同じメニューの練習をするのが印象的でした。
ただ追い込む時は、個人で追い込んでいくという感じでした。
プロ時代
プロの時は、個人練習が基本でした。
自分で目的を持って自分でメニューを組んで練習して、追い込む時も自分で追い込む感じでした。
プロとアマチュアでは、アマチュアのほうが練習時間が長かったです。
プロは仕事をしながらになるので、練習や体のケアにあまり時間を割くことができませんでした。
Q.試合前や試合が特にないときで、何かメニューやスケジュールが変わることはありましたか?
試合が決まりましたら、実戦練習のスパーリング練習が増えて、サンドバッグ連打の追い込み練習、腹打ち練習(腹を殴ってもらい腹を打たれても耐えられるようにする練習)がありました。
試合前は追い込む時間が長くなるので、トータルの練習時間も増えてました。
試合1ヶ月前になると、減量しながらの追い込み練習になるのでキツかったです。
一方、試合がないときは実戦練習が減りました。
普段の私は、基礎練習と走り込みを中心に行っていました。
Q.週間、月間、年間でのスケジュール例や意識していたことを教えてください
・バイトは、週6日働いて1日休んでいました。
ジムも日曜日休みなので日曜が休みでした。
ジムでの練習は週6です。
日曜日はスポーツジムで自主練習したり、スーパーに行って体重管理メニューを考えながら買物をしていました。
・試合1ヶ月前からは、追い込み練習でサンドバッグ連打、スパーリングが増えていました。
・年間で考えると多くて3〜4試合しかできないので、いつでも試合ができるように普段から体重管理をしておりました。
試合前の減量では13キロ落としていました。
Q.練習に向き合う際に大事にしていたことは何かありますか?
プロは勝負の世界です。
負けたら終わりなので、後悔のないよう練習で毎日限界まで出し切ることを大事にしていました。
高校生の時は、楽しく練習することを大事にしていました。
部活のみんなと練習だったので、励ましあって練習していました。
Q.ボクシングの練習はきつかったですか?
部活とジムの2部練習をしていたので、高校時代は辛かったです。
高校の時の減量中にやった、800メートルダッシュ7本はかなりキツかった思い出があります。
しかし、それを乗り越えたあとは、練習がきついと思ったことは特にありません。
練習は慣れるとそうでもなかったのですが、減量で水が飲めないほうが私は辛かったです。
中学3年生の時にジムでボクシングを始めましたが、昔ながらの厳しいジムだったので最初の練習でキツ過ぎて辞めたいと思いました。
ジムの先生が怖くて当時辞めると言えなかったため、我慢して続けていたら慣れて楽しくなって長く続けられたという感じです。
厳しく教えて頂いたお陰で、ボクシングのハードな練習を超える厳しさがいまだにないので、何でも乗り越えられる気がします!
ボクシングの練習について引退後の反省点
上記のQ&Aに加えて、当時を振り返った反省点も教えていただきました。
(トレーナーになって気付いたこと)
追い込むことばかり意識してオーバーワークもしていたので、ちゃんと知識があればもっと効率的な練習ができた気がします。
減量も知識があれば、もっと上手くできた気がします。
現役の時に、もっとボクシングを勉強しておくべきでした。
また、強さにこだわり過ぎて「楽しむ」ことを忘れていたので、ボクシングを楽しんでテクニックをもっと磨けば良かったです。
自分の過去の反省を活かして、今はジムで指導しております。
ボクシングの練習に興味がある方は「1日体験」を!
プロボクサーの練習について、ここまで紹介してきました。
ボクサー各々で練習メニューや練習への意識は変わってくるため、ジムに通われている方は、トレーナーにいろいろ聞いてみるのもいいかもしれませんね。
また「ボクシングはやったことがないけど練習に興味のある方」に対して、BOXING CLUBでは1日体験も準備しております。
ストレッチからシャドー、ミット打ち、サンドバッグなど実際の練習も体験できますので、ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。
画像出典:ボクシングモバイル